第一章 私について



残りの話を進める前に、私の事について触れておいたほうがいいだろう。

私の名前はジョン タイラー。イギリス人のコンピュータープログラマーだ。34歳で、身長はメートル近くある。うすいブラウンの髪、眼は髪と同じ色だ。あごの周りには髭を蓄えている。
年前、イギリスのブリストルに在る私の会社が国際事業で大きな成功を収めた。言えばあなたも会社の名前ぐらいは気づいてくれるだろう。
事業拡大の為、会社は若いハンガリアンチームを引っ張っていける人材を探していた。白羽の矢が当たった私は、ここブダペストオフィスでの勤務をしているというわけだ。
我々の会社の中でもとりわけ新しく、重要なポジションにいる私は仕事には十分満足している。くわえて一度も訪れたことの無かった、この国で働けるともなると興味深いのも当然だ。
多くのイギリス人と同じように私はハンガリーについては3つの事は知っていた。
  1. ドナウ川が都市をブダとペストの2つに分けている
  2. サッカーの国際試合で、一度だけハンガリーはイギリスを破ったことがある。ロンドンで、スコアは6-3
  3. みんないつも熱くて辛いグーラッシュを食べている
知るべきことが沢山あった! で、私はどんどん学んでいったのだ。

会社は私をハンガリー語の特別授業を受けさせてくれる学校に通わせてくれた。
ハンガリー語と英語はかなり違う。さすがに最初は戸惑った。
マンツーマン授業の私の先生、アンドレはとても美しく愛らしい若い女性だ。ダークブラウンの髪に青い瞳と眩しい笑顔。そして彼女は私をよく理解してくれた。
私達のレッスンは、すぐに教室の外でも行われることとなり、少しづつ恋に発展していった。
そして18ヵ月後、私達は結婚した。

平日は会社へ向かう。日中は働き、就業後は13区にある私達のマンションに帰る。
新しいオフィスのあるヴァーツィ通りへは歩いておよそ13分かかる。
通常、朝8時半から就業開始で午後時が定時だ。オフィスは明るくモダンで、私はいつも仕事を楽しむ。そして私は私と共に働く仲間が好きだ。

アンドレは私と働く時間が異なる。決まった教室で授業をするわけではない。いろいろな学校、会社で外国人にハンガリー語を教えている。場合によっては生徒の自宅で授業をすることもある。
我々の住む、13区はぺスト側にある。ドナウ川からそれほど遠くもない。13区の中でも古く、狭い道と沢山の小さなバーやレストランで賑わうエリアだ。今でも昔の雰囲気は感じることの出来る古い街。
そして私が、あの日、"私自身"に逢ったのも、この場所の通りでの出来事だった。